チャート式ポップカルチャー

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(コラム)Netflixの『ディファイアント・ワンズ』が提示したポップカルチャーの新たな視座

2014年、Appleが32億ドルでBeatsというヘッドフォン会社を買収するのではないかというリーク情報から始まる『ディファイアント・ワンズ』というNetflixのドキュメンタリーシリーズを観ました。

これは稀代の音楽プロデューサーでありBeatsの創設者である、ドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンという2人に焦点を当てたドキュメンタリー作品なのですが、これが非常に素晴らしいものでした。

 

これまでもNetflixにはヒップホップを題材にした作品がありましたが、例えば『ゲットダウン』や『ヒップホップ・エボリューション』などはヒップホップの聖典中の聖典『ワイルド・スタイル』をアップデートしようとしたものだったと思います。

もちろん、その姿勢や敬意の向く方向は非常に素晴らしいものなのですが、トラップの方が新鮮である現在、ヒップホップの歴史を初めから丁寧に紡ぐよりも、ケンドリック・ラマーや映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(全米では『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を超える大ヒットを記録した、ギャングスタラップの元祖N.W.Aを扱った伝記的映画)のルーツとしてのヒップホップ像を描く方が身近に感じられるという方も多いのではないでしょか。

そういった意味でも『ストレイト・アウタ・コンプトン』の先を描いたこのドキュメンタリーには大きな意味があるように思います。

 

また、この作品は非常に開かれたものとなっており、マーティン・スコセッシ監督の『グッド・フェローズ』が引用されていたり(『ストレイト・アウタ・コンプトン』という映画は『グッド・フェローズ』型の物語運びをサンプリングした作品だと言えます)、以前Spotifyをオススメする記事で触れた『誰が音楽をタダにした?巨大産業をぶっ潰した男たち』にも描かれているようなインターネット以降の音楽産業のビジネスモデルについても触れているので、必ずしもヒップホップマニアだけに向けられた作品ではないということもわかります。

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そして、ジミー・アイオヴィンが同時に語られるが故に、彼が一緒に仕事をしてきたジョン・レノンブルース・スプリングスティーンパティ・スミストム・ペティU2のボノといったロック界のレジェンドとの連綿と続くポップミュージックとしての連なりが見えてきたり、トレント・レズナーマリリン・マンソンといったドクター・ドレーと同時代のロックミュージシャンの表現方法とヒップホップにおける東西抗争とが時代の空気感を共有していたことがわかったり、ナップスター以降のインターネットの発展による、音楽産業の劇的な変化の波に乗ることができたのがスティーブ・ジョブズドクター・ドレーだったということがわかるという、ヒップホップだけに止まらないポップカルチャー全体を見渡せるような作品になっています。

 

とはいえ、やはりN.W.Aからギャングスタ・ラップの隆盛があり、次々とスターラッパーと仕事をするドクター・ドレーのダイナミズムは凄まじいものがあり、ソロになってからでもスヌープ・ドッグ、2パック、エミネム、50セントなどをフックアップし、今をときめくケンドリック・ラマーのリスペクト溢れるコメントに繋がっていく訳なので、やはりヒップホップヘッズにとってもマストな作品なのも間違いありません。

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年初にNHK-FMで放送された『今日は一日"RAP"三昧』も素晴らしいヒップホップ入門編でありながら確信も突いてくるような番組でしたが、また別方向からヒップホップへの興味の扉を開き、理解を助けてくれるようなドキュメンタリー番組だと思いますので、多くの方にオススメです。
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