『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』がこれまでの全米オープニング興収の歴代1位であった『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の記録を塗り替えただけでなく、全世界のオープニング興収の歴代1位であった『ワイルド・スピード ICE BREAK』の5億4190万ドルを塗り替える、6億4050万ドルを記録するなど、文字通り映画史を塗り替える様な特大のヒットを記録しています。
『インフィニティ・ウォー』はマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)のこの10年の集大成となるような作品であり、これまでの『アベンジャーズ』シリーズ以上にお祭り的作品でありながらも、ルッソ兄弟ならではの膨大な情報量が整理整頓されたエンターテイメント作品でもあり、今後も映画史の中でも語り継がれていくような映画になっており、そのような作品が『スター・ウォーズ』シリーズが持っていた記録を塗り替えたということは非常に象徴的なことのようにも思いますし、MCUのこの10年で積み重ねてきたことがこの作品によって時代に楔を打ったと言えるのではないでしょうか。
ということで、『インフィニティ・ウォー』は非常に素晴らしい作品なのでMCUの18作品と共に是非観ていただきたいのですが、今回はMCU以外の優れたアメコミ原作映画にフォーカスしてみたいと思います。
MCUと対比してよく語られるのが、実質2013年の『マン・オブ・スティール』から始まったDCエクステンデッド・ユニバースですが、必ずしもMCUのような成功を収めているとは言えないのが現状だったのですが、キャラクターの魅力が命であるアメコミ映画において、スーパーマンやバットマンを擁し、更にはガル・ガドットが演じるワンダーウーマンやマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインといった人気のキャラクターを生み出しているという点だけでも抗えないものがあり、『ワンダーウーマン』のヒット以降新たな活路が見えてきており、今後は必ずしもユニバースに拘らない良作に期待したいです。
さて、ここ20年程を振り返ってみると、MCUを含めてもアメコミ映画の最大の功労者は『X-MEN』シリーズでウルヴァリンを演じ続けたヒュー・ジャックマンなのではないでしょうか。
というのも、2000年から始まった映画『X-MEN』シリーズの第1作から、2017年の『LOGAN/ローガン』に至るまで同じ役を演じた彼という存在は、MCUのユニバース化への大きなヒントになっているのではないかと思うからです。
そして何と言っても彼がウルヴァリンとして、最後に出演した『LOGAN/ローガン』でのクリント・イーストウッドが乗り移った様な名演と骨太な作風は、まさにその功労を讃えるような傑作で、西部劇映画としても非常に素晴らしいものでした。
また、10年代に入ってからのアメコミ映画にとってマシュー・ヴォーン監督という存在も大きいように思います。
2010年の『キック・アス』ではアメコミ映画への批評性を持ち込み、2014年の『キングスマン』では『007』シリーズへの批評性を持ち込みながらも、その抜けの良いポップな作風により、アメコミ原作映画が優れたエンターテイメント映画になるということをMCU作品と同じように証明していました。
その間を行くような2011年の『X-MEN ファースト・ジェネレーション』という傑作での歴史的事実とフィクションとを交差させて物語を進めていく語り口は『キャプテン・アメリカ』シリーズとも繋がる手法であり、キング牧師とマルコムXの関係をトレースするような描写は『ブラックパンサー』を先取りしたようなものでした。
そして、『X-MEN』シリーズのスピンオフ作品であり、R指定が掛かっていながらもシリーズ中最も世界興収が高い『デッドプール』という映画も無視できません。
MCU作品の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヒット以降の流れではあるものの、ディズニー傘下のMCUではできないようなR指定ならではのエクストリームな表現も可能だという点と、何と言っても観客にそのまま語りかける第4の壁を破るデッドプールというキャラクターならではの特徴を違和感なく表現している点は、明確に他のアメコミ映画とは違った魅力のある作品となっています。
今後、『デッドプール』はMCU作品以外のマーベル・コミック原作の映画で一番の目玉作品へと成長していくのは間違いないでしょう。
ということで、来月には『デッドプール2』が公開されるのでこのタイミングに『X-MEN』の傑作を復習するのはいかがでしょうか。
MCU作品とはまた違った魅力が垣間見れると思います。
オススメです。