チャート式ポップカルチャー

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(コラム)2018年に改めて聴くアークティック・モンキーズの『AM』

今週、アークティック・モンキーズの新譜がリリースされます。

 

デビューアルバムがリリースされた2006年当時、高校生だった自分にとってはそれ以来一貫してロックンロールヒーローなのがこのアークティック・モンキーズなのですが、My Spaceという音楽SNSYouTubeが同時期に登場し、そういった新しいメディアを利用しデビューしたことも合わせて、新しい世代が到来したことを強烈に感じさせられました。

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完璧なデビューアルバムの1枚でもある名盤『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』以降、アルバムをリリースする毎に違ったスタイルを提示し続けているバンドなので、ファンの中でもアルバム毎に様々な反応があり、2013年にリリースされた『AM』というアルバムでは、ギャングスタラップを彷彿させるようなBPMをグッと落としたビートに、ブラック・サバス譲りのヘヴィなギターリフを乗せるというようなスタイルを取った作品だったのですが、こちらも賛否両論となりました(個人的には同年にリリースされたダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』と並ぶ、その年の最重要作品だと思っています)。

 

しかし、Netflixの『ディファイアント・ワンズ』が観ることができる2018年現在となってはドクター・ドレーとロックンロールを掛け合わせる事が有用である事は疑いようもないですし、そしてグッと落としたBPMはトラップとの共通点を見い出すこともできます。

また、カニエ・ウェストR・ケリーなどからの影響を独自に解釈したコーラスは、オートチューンによるボーカルエフェクトが当たり前となり、2016年に一世を風靡したプリズマイザーを通過した今、2013年当時よりも違和感なく聴くことができるのではないでしょうか。

更に言えば、英国伝統のユーモアを孕みながら男性性の情けなさを描いた歌詞は、当時よりもより皮肉さが増していると言えるでしょう。

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3枚目のアルバム『ハムバグ』以降、LAでレコーディングをしたり、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジジョシュ・オムのプロデュースによりバンドをアメリカナイズすることによってバンドのスケールを大きくする過程で、当時のバンドの中ではいち早くヒップホップ/R&Bのムードをバンドに取り入れたという点では、間違いなく『AM』期のアークティック・モンキーズは時代を先取りしていたと言えます。

 

その一方で、フロントマンのアレックス・ターナーのサイドプロジェクトであるラスト・シャドウ・パペッツでは盟友であるマイルズ・ケインと共に、ヨーロッパ的優雅さでもってルーツミュージックをモダナイズしていくという手法も行なっています。

また別の言い方をすれば、アークティック・モンキーズがアメリカ西海岸的な発想で音楽を発展させていったのに対し、ラスト・シャドウ・パペッツではアメリカ東海岸のヒップホップのネイティヴ・タンのような発想で欧州の伝統的な音楽を再定義していったのかもしれません。

 

つまりは、デビュー当時からのポール・ウェラーを思わせる様なモッズ的感性であったり、その風貌の変化に伴うロックンロールやヒッピームーブメントを思い起こさせるイメージに隠れてしまいがちですが、アレックス・ターナーはデビュー以来一貫してヒップホップのリスナーでもあり、そのヒップホップ的感性がその音楽性に大きく作用していると言えます。

そのフロウやストーリーテラーとして、ザ・ストリーツことマイク・スキナーからの影響はデビュー当時から言及されていますが、その語り口だけに留まらないものがアレックス・ターナーの音楽からは感じ取ることができます。

 

ということで、新アルバムを間近に控えたこのタイミングなのですが、今回のアルバムは今まで以上に情報がなく、一体どの様なアルバムになるのか全く想像できないというのが現状です。

アークティック・モンキーズのことなので、また今までのアルバムとは全く違ったアプローチをみせてくれるとは思うのですが、2013年の『AM』が現在を予知する様な内容であったことを鑑みるに、期待は増すばかりです。

ラップやポップがシーンの潮流を作る中、アークティック・モンキーズがどの様な作品をリリースするかは要注目なのではないでしょうか。