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(コラム)『爆裂都市 BURST CITY』から受け継がれたバトン、『パンク侍、斬られて候』

映画ファンにとっての『狂い咲きサンダーロード』がそうであるように、日本のパンク好きにとって『爆裂都市 BURST CITY』という映画もまたカルト的魅力に満ちた作品と言えます。

 

2010年に石井岳龍と改名する石井聰互監督が日本大学藝術学部映画学科在籍時に卒業制作として撮影された1980年の『狂い咲きサンダーロード』という映画は、荒々しくも溢れんばかりのエネルギーとスピード感に満ちみちた作品で、2016年にはクラウド・ファンディングによってオリジナルネガをリマスターしブルーレイ化、そして再上映されたような、今なお根強い人気を博す映画です。

 

また同監督による1982年公開作『爆裂都市 BURST CITY』という映画は、監督自らも公開までに編集が間に合わなかったとし、作品を「永遠の未完成の暴動」と評していることからも、『狂い咲きサンダーロード』と比べると映画としては散漫な作品と言えるかもしれません。

しかしながら、こちらもカルト的人気のある映画となっているのは、当時のめんたいロックや関西NO WAVEを始めとするような、ロンドンやニューヨークから伝播したパンクに影響を受けた日本の音楽シーンのドキュメンタリー的作品にもなっているからでしょう。

 

実際、ザ・ロッカーズから陣内孝則さんと鶴川仁美さん、ザ・ルースターズからは大江慎也さんと池畑潤二さん、遠藤ミチロウさん率いるザ・スターリンINU町田町蔵さんらが出演していますが、劇中でのライブシーンは非常に危険な香りが漂うアウトロー的かつアンダーグラウンドな魅力に満ちたものとなっています。

そして、ザ・ロッカーズザ・ルースターズの合体バンドであるバトル・ロッカーズが演奏する『セル・ナンバー8』は、チバユウスケさんがライブでカバーするなど、後のミュージシャンにも影響を与えた曲と言えます。

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その影響は決してミュージシャンだけではなく、脚本家の宮藤官九郎さんにも大きな影響を与えています。

「好きな映画を1本選んでください」という質問に対して、『爆裂都市 BURST CITY』か『狂い咲きサンダーロード』を挙げるという宮藤官九郎さんですが、彼が暴動という名でギターを担当しているグループ魂の「グループ魂のテーマ」という曲が「セル・ナンバー8」の替え歌という点でもその影響の大きさがわかります。

 

そして、『爆裂都市 BURST CITY』に出演していた町田町蔵さんは、後に町田康さんとして『くっすん大黒』で作家デビューし、2000年には『きれぎれ』で第123回芥川賞を受賞、2004年には『パンク侍、斬られて候』を出版しています。

 

現在公開されている石井岳龍監督の『パンク侍、斬られて候』は町田康さんによる原作、宮藤官九郎さんによる脚本というように、『爆裂都市 BURST CITY』から受け継がれたバトンがまた石井岳龍監督自身に返ってきたような映画となっています。 

出演者も、ブラッドサースティ・ブッチャーズの曲から着想を得た2015年の『ソレダケ/that’s it』に出演した綾野剛さんや染谷将太さん、2001年の『ELECTRIC DRAGON 80000V』に出演した永瀬正敏さんや浅野忠信さんといった『爆裂都市 BURST CITY』の遺伝子を継ぐような同監督作からのオールスターキャストが出演しています。

 

さて、『アフター6ジャンクション』で春日太一さんが時代劇入門にて言及していたように、時代劇というのは過去の再現ではなく、過去を題材にした映像作品のことであり、そこにはファンタジーやSFの要素も盛り込むことができ、現代的なメッセージを込めることができるフォーマットです。

そういう意味では、『パンク侍、斬られて候』もカルト映画としてだけではなく、現代社会の写し鏡としても観ることが可能なのではないでしょうか。

そして、そんな映画がエイベックス通信本社が運営するdTVの1社による製作で作られているという点は、DIY的パンク精神に繋がるように思えるのも面白いところです。

 

40年前のロンドンやニューヨークで誕生し、そして日本にも伝播したオリジナルパンクの精神に溢れる製作陣によって時代劇による暴動を起こしているのが『パンク侍、斬られて候』という映画だと思います。

今の世の中にこそ響く価値観も多くあると思いますし、主題歌のセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を大音量で聴けるチャンスです。

是非スクリーンでご覧ください。

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