チャート式ポップカルチャー

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(コラム)『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がポップカルチャーに与えた影響

2014年に公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と2017年に公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』という映画はある世代にとっては『スター・ウォーズ』シリーズに取って代わるような作品となっているのではないでしょうか。

 

現在、公開されている『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が西部劇やフィルムノワールといったジャンルに先祖返りし、宇宙を舞台に活躍するアウトローの成長譚となっていたのは、『スター・ウォーズ』シリーズを現代的でポップにアップデートした同じディズニー傘下の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズへのある種のカウンターだったのではないかと思います(降板させられた監督のフィル・ロードとクリス・ミラーのまま撮影が進んでいたとすればもっと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』的な作風になっていたとも言われています)。

 

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の何が新しかったのというと以下の3点が挙げられます。

・大胆なポップミュージック使いとその歌詞と物語のシンクロ

・カルフルでポップな色調とデザイン

スターウォーズシリーズよりも現代的なテーマやキャラクター

 

例えば音楽の使い方はクエンティン・タランティーノ監督のそれを更新するようなものだと思いますし、カセットウォークマンをキーアイテムとしてスペースオペラの世界の中に登場させ、音楽がなくてはならないようなキャラクターを主人公にしていることでポップカルチャー好きにとっても非常に感情移入しやすかったのではないでしょうか。

2017年公開のエドガー・ライト監督作『ベイビードライバー』にもiPodがキーアイテムとして登場し、音楽がなくてはならないようなキャラクターが主人公の作品でしたが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』での手法をよりブラッシュアップしたような映画になっていました。

 

そして、2013年に公開された『ホドロフスキーのDUNE』というドキュメンタリー映画の中で描かれていた、1975年に企画されるも実現されなかったアレハンドロ・ホドロフスキー監督による『DUNE』という作品を彷彿とさせるカラフルでポップな色調とデザインも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の新鮮だった部分です。

宇宙船のデザイン一つとってみても、『2001年宇宙の旅』や『スター・ウォーズ』以降のモノクロを基調としたリアル志向なものとは異なり、前述の『DUNE』にも参加していたクリス・フォスによるカラフルで生物的なものとなっており、『DUNE』に対する敬意を感じるものでした。

更に、カラフルでポップな色調といった特徴は『ラ・ラ・ランド』や『ムーンライト』といった近年の映画の潮流とも重なるものです。

 

そして、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の公開当時から、たびたび言われていたことは『スター・ウォーズ』の再来だということです。

当時『スター・ウォーズ フォースの覚醒』も公開されておらず、また『スター・ウォーズ』のプリクエル・トリロジーからも10年が経とうとしている中での公開だったので、ある世代にとってはスペースオペラへの入り口が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』になり、またそれまでに『スター・ウォーズ』に触れてきた人達にとっても新たなスペースオペラの傑作となったのではないでしょうか。

また『スター・ウォーズ フォースの覚醒』も新しい世代にとっての『スター・ウォーズ』像を示した傑作だと思うのですが、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』で描こうとした血族に捉われない物語という点では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』の方に軍配が上がり、その点でも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの方が現代的な作品と言えるのではないでしょうか。

 

他にも、今ではハリウッドの中でも屈指の人気俳優となっているクリス・プラットが大抜擢されたのも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でした。

それまでは端役の多かったクリス・プラットですが、現在では古き良きヒーロー像を最も体現するハリウッド俳優となっており、『ジュラシック・ワールド』シリーズでの活躍も目覚ましく、もう少し若ければ『ハン・ソロ』もクリス・プラットが演じていたのではないかと思えるほどです。

 

またマーベル・シネマティック・ユニバースにとっても2014年は大豊作の年で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以外にも『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』も公開されており、方向性は異なるも2作品共にマーベル・シネマティック・ユニバースの最高傑作として挙げられる作品であり、今年公開された『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の監督がルッソ兄弟であり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のキャラクターの扱いの大きさを考えてみても、この年はマーベル・シネマティック・ユニバースにとっても大きなターニングポイントだったと言えます。

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さて、7月21日、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督がシリーズ第3作目から降板するというニュースが流れました。

原因は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の監督を引き受ける前に投稿していたタブーを破るような攻撃的なツイートがウォルト・ディズニーの価値観に相入れないとし、今回の降板騒動に至ったとされています。

一方で、ジェームズ・ガン監督がトランプ政権に対し否定的だったことから、その反発としてオルト・ライトのコメンテーターが過去の一連のツイートを掘り起こしたとも言われています。

 

今回掘り起こされた、ジェームズ・ガン監督の一連のツイートは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの持つ素晴らしさとは乖離したひどいものだと思いますし、現状のディズニーの方針を考えれば、その価値観と相反するものだということも理解できます。

ただ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズがポップカルチャーに与えたポジティブな影響というのは非常に大きなものだと思いますし、反省し更生しようとする監督の姿勢であったり、監督の作家性やポップカルチャー愛は映画そのものに強く結びついたものであり、そういった部分に感動し興奮していたからこそ、他の監督による『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズも現時点では考えられません。

諸々今回のジェームズ・ガン監督の降板騒動には非常にモヤモヤしており、なかなか心の整理がつけられないニュースとなりました。