チャート式ポップカルチャー

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(エッセイ)5G時代のオフライン環境での映画鑑賞について

 

前回のエッセイでは映画館から少し足が遠ざかっていることを書きました。

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最近では、NetflixAmazon Primeをはじめとする動画ストリーミングサービスが普及し、優れた作品がその中から生まれています。

また、様々な環境で映画やドラマを観ることができるようになることは文化の多様さを広げてくれるという点でも素晴らしいことです。

音楽でもYouTubeSpotifyが存在しない時代に戻ることはもはや想像できません。

 

とはいえ、映画館で映画を観るということが特別であることは全く変わらないように思えます。

というのも、スマートフォンの普及でインターネットがより身近なものになり、今後も5Gの導入によってあらゆるものがインターネットに常時接続される社会が目に見えている昨今では、オフラインであることこそが特別なものになると思うからです。

 

インターネットに常に接続されているというのは、ある意味では集中を伴ったのめり込みが阻害されることでもあります。

TBSラジオが今年開設した「スクリーンレス・メディア・ラボ」が映像ではなく音声による情報伝達の可能性を研究しているように、情報が飽和状態の中ではあえて削ったり絞ったものが求められることもあると思います。 

だからこそ、暗闇の中で2時間のオフラインの状態を作ることのできる映画館での鑑賞というものは今後も特別なものであり続けるように思うのです。

 

一方、5Gの技術が導入されると通信速度が飛躍的に上がり、現在の平均的なLTEの通信速度と比べると100倍ほどになると言われており、2時間の映画がほんの数秒でダウンロードできるようになり、遅延もほとんどないことから遠隔医療や自動運転への活用も期待されています。

そうなると、ますますストリーミングサービスは便利になり、音楽やスポーツの中継のあり方が劇的に変化することになるでしょう。

 

現在、世界中の5Gの特許数のうち1/3を中国が占めており、アメリカでさえその1/3しか所有していません。

このことが国家だけでなく企業をも巻き込んだ米中貿易戦争の火種の一つとなっています。

だからこそ、新しい技術によってもたらされるものを享受しながらも、スマートフォンから距離を置いて紙の本に向き合う時間であったり、オフラインの状態を作ることができる映画鑑賞であったり、そのどちらにも価値を見出すことも大事なのではないかなと考えています。