チャート式ポップカルチャー

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(コラム)日本のポップミュージックの祭典としての第69回紅白歌合戦

去年の大晦日は第69回紅白歌合戦を観ていました。

結論から言うと、去年の紅白は見所も多く、今まで観てきた紅白の中でも最も楽しい紅白でした。

特に印象に残ったことは、日本のポップミュージックの流れを様々な視点から眺めることができたこと、そして今後の紅白の展望をミュージシャン自身が提示していたことです。

 

1つ目の日本のポップミュージックの流れを様々な視点から眺めることができたというのは、出場歌手のラインナップや曲目まで様々な文脈を訓み解く余地があったということです。

今回の紅白は「平成最後の紅白」ということで、どうしても平成を総括するような紅白が求められる中、平成という期間に捉われることなく日本のポップミュージックの様々な文脈を配置した流れは素晴らしい試みでした。

 

 

まず、YOSHIKIさんとHYDEさんのコラボではSUGIZOさんがギターを演奏しており、X JapanLUNA SEAとL'Arc-en-Cielというヴィジュアル系を席巻したバンドのメンバーが同じステージに揃ったことに圧倒されてしまいました。

 

そして、松田聖子さんがメドレーで披露した「風立ちぬ」「ハートのイヤリング」「天国のキッス」「渚のバルコニー」という4曲はそれぞれ大瀧詠一さん、佐野元春さん、細野晴臣さん、松任谷由実さんが作曲し、全てを松本隆さんが作詞した曲でした。

この選曲からもわかるように80年代のアイドル全盛期の松田聖子さんのバックを支えていたのは、はっぴいえんど〜ナイアガラ〜ティン・パン・アレーといったニューミュージック以前から続く文脈だったということが強調されていました。

 

その流れがあったからこそ、ニューミュージックのど真ん中にいた松任谷由実さんとニューミュージックのアンチテーゼとして登場したサザンオールスターズがJ-POPの登場を予感させる曲やニューミュージックとJ-POPの架け橋となるような曲を選曲していたことも文脈として成り立っていましたし、紅白全体としてもこれまでの日本のポップミュージックの流れを提示したように見えたのかもしれません。

 

だからこそ、Suchmosあいみょんさん、Perfume三浦大知さん、米津玄師さん、星野源さんといった今の日本のポップミュージックを代表するようなミュージシャンのパフォーマンスを紅白で観ることができることにより一層特別感を抱くことができました。

また、最近の日本国内では大人数によるダンスが人気の中、東京オリンピックを控え世界に日本の技術をアピールするタイミングが迫っている今、Perfumeの積極的にテクノロジーを取り入れようとする姿勢は非常に重要なものになっていくのではないでしょうか。

 

そして、もう1つの今後の紅白の展望をミュージシャン自身が提示していたことというのは、おげんさんのパフォーマンスの際に星野源さんが発した「紅組も白組も性別関係なく混合チームでいけばいいと思うの」という言葉が端的に表すようなことです。

おげんさんの他にも、2年連続で紅組でも白組でもない混合チームで出演している椎名林檎さん、そしてサラ・ブライトマンとコラボすることで紅組でも白組でもパフォーマンスをしたYOSHIKIさん、そしてサザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」での桑田佳祐さんと松任谷由実さんのデュエットなど、ミュージシャン自らがルールの枠組みを飛び越えていくような自由な雰囲気が非常に印象的な紅白でした。

今後もルールに縛られることなく、ルールを疑いながらも自由でより良い紅白に繋がればなと思えるほどに希望に溢れていました。

 

観る前までは平成最後の紅白にSMAP安室奈美恵さん、Mr.Childrenらがいないことに寂しさを覚えたのですが、いざ始まってみれば日本のポップミュージックの祭典としての豪華さもあり、様々な視点が盛り込まれていることで日本のポップミュージックを多角的にみることができ、平成という区切りに捉われない素晴らしい紅白でした。

こんな紅白が続くのであれば、毎年紅白を観たいなと思っています。