チャート式ポップカルチャー

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(コラム)『ブラックパンサー』のポップカルチャー性

映画『ブラックパンサー』が遂に日本でも公開されました。

 

ブログを始めてしまう位、非常に期待していた映画だったので公開初日に観てきたのですが、結論から言うとマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)の作品の中でもトップクラスに面白い映画だと思います。

ストーリーは昨年公開されインド映画史上歴代ナンバー1ヒットを記録した『バーフバリ』シリーズのような王位継承を巡る物語で、MCU作品の世界観を踏襲してはいるものの、1本の映画の中でストーリーは完結しているので、『アイアンマン』1作目や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』1作目と同じくらいMCU入門にもぴったりの作品です。

と言うよりも、MCU作品であったり、アメコミ映画という枠を超えて、一本の映画として非常にポジティブな気持ちにさせてくれる優れたエンターテイメント映画なので、誰もが楽しめる素晴らしい映画なのではないでしょうか。

 

ということで、おすすめして終わりでも良いのですが、折角なのでもう少しこの映画のことを考えてみたいと思います。

現在、全米では『スターウォーズ/フォースの覚醒』に次ぐようなスピードでヒットしています。

このヒットは、02年公開のサム・ライミ監督の『スパイダーマン』の大ヒット以来、大作エンターテイメント映画として着実に地位と技術を高めてきたアメコミ映画の流れ、そして08年の『アイアンマン』の成功によるMCUのシリーズの定着、そしてマーベル・スタジオだけでなく『スター・ウォーズ』シリーズ有するルーカスフィルムすら傘下にしたウォルト・ディズニー社の強かさ、その全てを基盤にしていることは間違いないのですが、それだけでなく近年のグラミー賞アカデミー賞でのブラック・ライヴス・マターやミートゥー運動、タイムズアップ運動などの時代の空気感をしっかりと捉えた作品であるというのも大きいように感じました。

ちなみに、去年のDC・エクステンデッド・ユニバース作品の『ワンダー・ウーマン』が『ジャスティス・リーグ』以上にヒットしたのもこの流れにあると思います。

 

そして、以前ブログに書いた通り、現在の映画と音楽という二大エンターテイメントの才能が一堂に会したこともやはり大きいと思いました。

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実際に観て気がついたのですが、『ブラックパンサー』には『ムーンライト』や『ゲット・アウト』に出演していた俳優が出演しています。

『ムーンライト』は映画冒頭にケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』とシンクロしたような演出があったり、チョップド&スクリュードというヒップホップで使用されるリミックス方法を劇中の伴奏に取り入れた映画であり、『ゲット・アウト』はチャイルディッシュ・ガンビーノの「レッドボーン」が挿入歌として使用されるなど、両作品共に黒人音楽との結び付きの強い作品でした。

 

他にも全米で公開された際にはジャネール・モネイの新アルバムのトレイラーが上映前に公開されたことも話題になりました。

ジャネール・モネイは一貫してアフロフューチャーリズムをテーマに描いてきた才気溢れるミュージシャンなのですが、彼女は女優としても活躍しており、『ムーンライト』や『ドリーム』にも出演していることを考えると、黒人のカルチャーや女性の活躍を描いた『ブラックパンサー』に音楽と映画の両面からシンクロしている素晴らしいコラボレーションでした。

youtu.be

というような、様々な読み解きができる映画ではあるとは思うのですが、冒頭に書いたように非常に面白い映画であるというその一点の強度だけを信じ、これ程までに様々なカルチャーや時代の空気感を見事にまとめあげたライアン・クーグラー監督の手腕の恐ろしさたるや。

これぞポップカルチャーと言いたくなってしまう素晴らしさでした。

とにかくおすすめです。