チャート式ポップカルチャー

チャートやプレイリストから現在のポップカルチャーを眺めるブログ

(コラム)ポップカルチャーの歴史としての『レディ・プレイヤー1』

ここ数年、80年代ポップカルチャーへの愛が満ちた作品が多く、それはNetflixのドラマ『ストレンジャー・シングス』(スティーヴン・スピルバーグスティーヴン・キングの世界を掛け合わせたような傑作ジュブナイルドラマ)だったり、映画『シング・ストリート 未来へのうた』(アイルランドを舞台にした80年代MTV世代の青春音楽映画)など、80年代のポップカルチャーに接することが増えてきているという実感があります。

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更に『パワーレンジャー』や『スパイダーマン:ホームカミング』、『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』では、85年のジョン・ヒューズ監督作『ブレックファスト・クラブ』における、それぞれスクールカーストの異なったキャラクターたちが交流する様が引用されています(深読みすると、分断の時代だからこそ他者を知ることで成長するという物語を、説教臭くなくあくまでも青春ものとして楽しめる部分が求められている部分なのかなと思ったりもします)。

 

またGWを間近に控えた現在、日本の劇場で公開されている映画は、巨大ロボと怪獣が戦う『パシフィック・リム アップライジング』や、TVゲームの中に迷い込んでしまう『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』であったり、『ドラえもん』や『名探偵コナン』、『クレヨンしんちゃん』などのアニメ映画が同時に公開されており、それぞれヒットしていることを考えると、アニメや特撮、TVゲームといったカルチャーが独立したものではなく、エンターテイメント映画のど真ん中に存在していることがわかります。

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そんな中、その2つの流れの本流といってもいいようなスティーヴン・スピルバーグ監督による『レディ・プレイヤー1』が公開されました。

 

ここでスピルバーグ監督作を振り返ってみると、『続・激突! カージャック』で劇場用映画監督デビューし、『ジョーズ』や『未知との遭遇』、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『E.T.』、『ジュラシック・パーク』、『シンドラーのリスト』、『プライベート・ライアン』などの名作を生み出し、映画史を何度も塗り変えてきたというのは言うまでもありませんが、ここ15年程でも『宇宙戦争』や『ミュンヘン』、『リンカーン』、『ブリッジ・オブ・スパイ』など、ますます凄みを増しているフィルモグラフィには最早うっとりさせられます。

 

また製作総指揮作を含めれば、更に『グレムリン』や『グーニーズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『メン・イン・ブラック』シリーズ、『トランスフォーマー』シリーズまで加わるわけで、まさにポップカルチャーを牽引してきた人そのものと言えるでしょう。

 

更に今年は、日本では1月も経たないうちにスピルバーグ監督の映画を2本も観れてしまうという年なのですが、もう1本が『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』という対比も、例えば『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』や、『宇宙戦争』と『ミュンヘン』が同年に公開された時のような、今、両方撮らないと気が済まないという監督の気概を感じさせます。

 

話は少しそれますが、今年の春先から相次いでレジェンドの活躍が目立ちました。

例えば、このブログでも最頻出の『ブラックパンサー』やアカデミー作品賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』と同日に公開された、クリント・イーストウッド監督の『15時17分、パリ行き』のその作風だったり、音楽関係のニュースではフジロックのヘッドライナーとしてボブ・ディランが出演することが発表され、ケンドリック・ラマーと並び、ヘッドライナーとして新旧の音楽界きってのリリシストが横並びになるということには心底興奮させられました。

 

クリント・イーストウッドボブ・ディランスティーヴン・スピルバーグ

現在、順に87歳、76歳、71歳という年齢の彼らですが、ボブ・ディランの『ネヴァー・エンディング・ツアー』と称したライブツアーが象徴するように、この3人は今もなお精力的に活動し、常に刺激的な作品を生み出し続けています。

だからこそ、神格化してしまいがちなのですが、きちんと現実と向き合い続けた作家達でもあることから、現在のポップカルチャーに対して常に新しい視点を切り開こうとしているところ(SMAPの歌詞にあるような「好きな映画や 好きな音楽とかに 影響されすぎて 今を見失うなよ」的視点とでもいうのでしょうか)も信頼できる部分です。

 

というように、ポップカルチャーの歴史の積み重ねがいよいよ膨大なものとなり、データベース的蓄積があればより楽しむことできる作品が増えている昨今ですが、そこを軽々しく飛び越えることができるのもまたポップカルチャーというものです。

そんな作品の1つでもある『レディ・プレイヤー1』なのですが、スピルバーグ監督作品の中でもかなりエンターテイメント性の強い作品でもあるので、まさにポップカルチャーのダイナミズムと歴史の連なりを没入して体験できるような映画になっています。

 

GW前ということもあり、毎週のように大作映画が公開されていますが(来週はいよいよ『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』が公開されます)、大きいスクリーンで観れる今のうちに観るのがオススメです。

 

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