チャート式ポップカルチャー

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(コラム)新しい地図の『クソ野郎と美しき世界』と平成のポップカルチャー

ニッポン放送中居正広 ON&ON AIR』で新しい地図の新曲「雨あがりのステップ」をオンエア後、中居正広さんが「なんだこの歌。これは売れないな。詳しいわけじゃないけど、かすれ声、雑な声が入ってないと、これは売れないですね」と冗談めかしながらもエールを送っていました。

 

さて、SMAPは2016年をもって解散した際に、天皇生前退位と重ねられたこともあるように、平成というタームと親和性の高いものとして捉えられているように思います。

90年代のSMAPの楽曲というのは渋谷系フリーソウルの流れを組むような楽曲が非常に多く、特にサンプリング感覚であったりクラブカルチャーとの接近、そしてそれまでのジャニーズとは違った非振付的なダンスの自由さは90年代の空気感とも共振したものでした。

個人的には『Smap Vest』もよく聴いていたのですが、それ以上に『SMAP 007~Gold Singer~』や『SMAP 008 TACOMAX』のように、オリジナルアルバムになると更にファンキーなアレンジが加えられるというのが非常に好きでした。

 

そして「世界に一つだけの花」以降、00年代には更に国民的グループとしての人気を確立し、アイドルグループとして以上に各々のタレントとして地位を固めていったというのもSMAPの凄さだったと思います。

森田一義アワー 笑っていいとも!』の最終回の際、タモリさんと明石家さんまさん、ダウンタウンウッチャンナンチャンとんねるず爆笑問題ナインティナイン笑福亭鶴瓶さんらが同じステージに集結した際に、中居正広さんが求められたのはその際たるものではないでしょうか。

 

話を少し変えますが、SMAPがデビューした頃の90年代の日本の映画界は、塚本晋也監督や黒沢清監督、岩井俊二監督、是枝裕和監督、青山真治監督など新たな才能を持った監督が次々と登場した時代でしたが、中でも北野武監督の存在は非常に大きなものでした。

当初、深作欣二監督、ビートたけしさん主演で計画されていたものの、スケジュールの都合で深作欣二監督が降板、その結果北野武監督のデビュー作として1989年に公開されたのが『その男、凶暴につき』です。

 

ちなみに、新しい地図の「72」にコーラスで参加していたノーナ・リーヴス西寺郷太さんは以前、「1989年のソウル・II・ソウル以降は90年代だ」と言っていましたが、1989年というのは平成が始まった年であり、アメリカではニルヴァーナデ・ラ・ソウル、イギリスではストーンローゼズ、日本ではフリッパーズ・ギターなどがデビューアルバムをリリースしているようなカルチャー面でも重要な年です。

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ということで前置きはこの辺に、新しい地図稲垣吾郎さん、香取慎吾さん、草彅剛さんが出演している『クソ野郎と美しき世界』が4月6日から公開されました。

 

園子温監督、山内ケンジ監督、太田光監督、児玉裕一監督ら4人によるオムニバス映画なのですが、この映画が平成以降のポップカルチャーを振り返ることを促されるような内容であると共に、社会や組織のあり方に歪が生じ始めている昨今、新しい地図の3人の境遇だけではないものも透けて見え、そう言った意味でも今観る価値のある映画のように思えます。

 

まずは90年代からの接続でいえば、特に太田光監督の「光へ、航る」の会話のテンポ感や沖縄で撮影された風景など、北野武監督の最高傑作としても挙げられる『ソナチネ』を想起させる部分があり、お笑い芸人としてビートたけしさんからの色濃い影響のある太田光さんですが、映画にもその遺伝子が受け継がれていることがわかります。

また俳優という視点でも90年代以降、日本の映画界で重宝され続けてきた浅野忠信さんが出演しているという部分にも平成以降の邦画の流れを感じさせます。

 

また、00年代以降世界でも評価されてきた園子温監督の「ピアニストを撃つな!」は、過剰で振り切った演出が稲垣吾郎さんのミステリアスな一面と妙にマッチし、監督の女性を走らせることが大好きだというフェチズムが炸裂し(『リアル鬼ごっこ』もそんな映画でした)、更には『冷たい熱帯魚』で強烈な印象を残してくれたでんでんさんも出演しているという、園子温ワールドそのもののような映画でした。

 

そして10年代、言わずもがなこの映画のストーリーには新しい地図の事務所脱退問題が根底に流れており新しい地図のメンバー3人がそれぞれ出演しているパートでは一貫して喪失が描かれていますが、オムニバス最後の「新しい詩」ではまるで現在公開中の『グレイテスト・ショーマン』のようなミュージカルシーンに突入し、その喪失をポジティブな方向に転換していこうとしていきます。

そのパートを監督しているのがリオデジャネイロ五輪の閉会式でチーフ映像ディレクターを務めた児玉裕一さん(同じくクリエイティブスーパーバイザー兼音楽監督を務めた椎名林檎さんの旦那さんで、SMAPの「華麗なる逆襲」は椎名林檎さんが提供し、児玉裕一さんがPV監督を務めています)なのは、2020年以降もちゃんと見据えているからなのではないでしょうか。

 

ということで、元号が変わる直前、一足先に平成を飛び出した3人にしか見えない、新しい地図という視点から見た日本のポップカルチャーの過去、現在、未来を繋ぐような映画が『クソ野郎と美しき世界』だと思います。

だからこそ、なんだこの映画。これは売れないな。詳しいわけじゃないけど、かすれ声、雑な声が入ってないと、これは売れないですねという感想も出てくるかもしれませんが、2週間限定の公開ですので是非大きなスクリーンで体感してみてください。